ローリング・ストーンズ「ブラック・アンド・ブルー」
このアルバムはストーンズにとっては実験的だったのだろう。様々な種類の曲が混在している。トータルでは成功したとは言えないだろうが、個々の曲に素晴らしいものがいくつかあり、僕はこのアルバムをかなり愛している。発売は1976年。
「ホット・スタッフ(Hot Stuff)」
当時、ディスコサウンドがヒットチャートを賑わしていた。その影響だろう、自らのルーツの黒人音楽・R&Bに回帰したかのよう。アップテンポだが力強く、かつファンキー。アドリブが利いて、ストーンズ流ジャズファンク。
これはストーンズの曲としても演奏としても素晴らしく、彼らのルーツに回帰するとともに、新たなストーンズ・サウンドの可能性を匂わせた。
「メロディ(Melody)」
ビリー・プレストンのピアノが光るナンバー。ジャジーだが、ブラックでファンキー。当世流行の「おしゃれな」感じもある。ビリーとの掛け合いのミックのボーカルも素晴らしい。
「メモリー・モーテル(Memory Motel)」
ストーンズのバラードの中でも最高の一曲。ミックのボーカルに、キースのしゃがれ声が間のあいた掛け合いになっていて、「ここぞ」という感じが素敵❣。
「愚か者の涙(Fool to Cry) 」
ミックでなければ歌えないブルースっぽいバラード。この系統に「レット・イット・ブリード」(1969)の「モンキー・マン」、「メインストリートのならず者」(1972)の「ダイスをころがせ」があり、ミック特有の自虐的ボーカル❤?。彼はこのような曲で私生活を懺悔していたんだろうか?。
このアルバムからアダルトなストーンズが期待されたが、残念ながら、次の「SomeGirls」(1978)では従来の若者向けで、よりポップになってしまった。
「ブラック・アンド・ブルー」が批評家から辛辣な意見も出て問題作とされ、ストーンズは常に「売れる」「受ける」ということに敏感で、彼らの能力の高さと柔軟さもあっての原点回帰…。だからこそチャーリー・ワッツの死まで半世紀に渡ってロック界に君臨し続けたのだろう。